Miyamoto Tsuneyuki on his interest in writing, the Xanadu manual, and Asteca II
「正直いうとアドベンチャーってキライなんですよね」と語る今月のテクノマンはアドベンチャーの権威である。今、断然注目を浴びている日本ファルコムへ取材にいってこんな言葉を聞くとは思ってもみなかった‥‥。
日本ファルコムといえばあの『ザナドゥ』を世に送り出したソフトハウスとしてあまりにも有名だが、RPGの『ザナドゥ』シリーズと並んで同社の看板ソフトとなっているのがアドベンチャーゲームの『アステカ』シリーズだ。今回のホットアクセスは、『ザナドゥファイル』などの著述を手がけるかたわら、待望の『アステカⅡ 太陽の神殿』の制作を終えた宮本恒之さんに、メディアを超えたソフト制作の喜怒哀楽をうかがってみた。
日本ファルコムとの出会いについて聞かせてください。
宮本ぼくは昔、家電の空調関係の仕事をやってたんだけど、ちょうど会社の裏に前のファルコムがあったんですよ。4年前になるかな?で、アップルがほしかったから、そこで扱っていると聞いて行ってみたのが最初ですね。
入社することになったイキサツは?
宮本その頃はショップを開いているだけで、社長しかいなくてね、通っているうちにいつのまにか社員になっちゃったんだな(笑)。ウチの初期からいる連中は皆そうですよ。木屋(『ザナドゥ』の作者)にしてもね。
転職するにあたって不安とかはありませんでした?
宮本ないですね。前の会社にずっといる気もなかったし‥‥。ぼく流のいい方をすれば、神秘的なリズムに導かれて来たという感じですね。
パソコンに対する興味はかなり昔からあったんですか?
宮本そうね。ぼくは初代のPC-8001から持っていたから。当時はパソコン誌もリスト中心で、芸夢狂人がデビューしたばかりなんて頃(笑)。8001、アップル、FM77、8801mkⅡFRといろんなハードを持っているけど、プログラムは組まずゲームをやるだけだったね。
そもそもパソコンに関心を持った理由は?
宮本ぼくはどちらかというとマッド・サイエンティストのほうだから(笑)、個人がコンピュータを持てるということ自体に一種のあこがれと優越性を感じたんだね。いわゆるいちばん古いタイプのパソコンユーザーなんですよ。
ファルコムに入ってからはどんな仕事をしました?
宮本とにかくメンバーが少なかったから、店番したり、コンピュータに向かったり、いろんなことをやりましたよ。でも、広告関係とか、マニュアルとか、文字まわりが中心だね。文字が好きだったから。マニュアルについては、会社に入る前からFM-8のワープロで書いたりしてましたね。
ーーそういうバイトをしているうちに、ある日入社することになったわけですか。
宮本いや、バイトというんじゃなくて、単に文字を書くのが好きだったから無償でやってましたよ。お遊びというか‥‥。
ーープログラムにはさほど関わりはなかったんですか?
宮本少しはやってたけど、ぼくはプログラムには向かない性格だから(笑)。それに、今は1人の人間がプログラムを全部やることもないでしょう?ぼくは、何でもできるというより、ひとつできればよいという気がしますね。世の中に逆らってますけど。
今までに手がけた作品というと?
宮本ウチで出した商品のすべてに、なんらかの形で関わってますね。でも、『アステカ』シリーズがメインといっていいでしょう。
宮本さんは、パソコン関係に従事する者にしてはめずらしく、文章を書くのが好きだという。その資質を活かして日本ファルコムではマニュアル作成を一手に引き受け、特異な存在となっている。また、関心を持つジャンルもオカルトや魔術、神秘主義というから変わっている。そんな風変りな宮本さんが自身のメイン作品として打ち込む『アステカ』シリーズとは何なのだろう。ゲームの表層からではうかがえない『アステカ』の深奥に追ってみよう。
『アステカ』シリーズについて聞かせてください。
宮本『アステカ』には一貫したテーマがあるんです。それは、今の文明に先行するもうひとつの文明を解明することで人間の本質に迫ろう、というものでね(笑)。非常に抽象的になっちゃうんだけど。
ーーもう少しくわしく教えてください。
宮本中南米に限りませんが、アトランティスに代表されるような古代の先行する文明があって、ある意味では我々の文明より進歩していた。そしてその遺跡から我々の知らないような知識や技術を得ることができるのではないか、といったイメージがぼくにはありましてね。それをテーマにして、古代に流れる思想とか、人間のあるべき姿とか、英知とかを表すことができたらいいな、と思ってるんです。それが完全にゲームの中に取り入れられるかどうかは別にして、『アステカ』シリーズにはそういうテーマがあるんですね。
ーー昔からそのような考え方を持っていたんですか?
宮本自然と人間というものについては昔から興味がありましたね。神秘主義なんかもね。
ーー中南米を舞台にしたアドベンチャーというと、アップルに『マスク・オブ・ザ・サン』というのがありましたね。
宮本影響を受けてますね。あれはかなりよくできたゲームだと思ってます。ただ、英語だからね。
具体的にはいつ頃着手したんですか?
宮本最初の『アステカ』(『Ⅰ』)は3年前の4月頃に着想段階に入ったんだけど、内容がぼう大になってしまって、実行に移すにはたいへんな時間が必要になったのね。で、とにかく商品を出そうということになって、サワリの部分だけを作ったのが『Ⅰ』になったワケ。それでも10ヵ月はかかってるけど。
『Ⅰ』が終わってからは何をやってました?
宮本『ザナドゥ』のデータ設定がぼくのほうに回って来たので、モンスターズマニュアルに全精神を集中していましたね。
ーーあの設定はよくできている。
宮本ふーん。3ヵ月くらいかかりましたね。たいへんだったんですよ。自分でもあのモンスターのデータ設定はいい出来だと思ってます。一貫した考え方でやってたから。
ーーお1人で?
宮本そう。1人でやったんです。『シナリオⅡ』のほうは大勢でやってますから、ぼくには納得できないところもあるんですけどね。『Ⅱ』のほうは日程的にも量的にも無理だったんです。よくいってるんですよ、『あのモンスターマニュアルはぼくの遺作だ』ってね。
ーー確かに『ザナドゥ』のマニュアルは、当時の日本のRPGの中でも画期的な出来ばえでしたね。
宮本できれば『ウィザードリィ』『ウルティマ』を超えたといってもらいたいですね(笑)。ある雑誌ではマニュアルのベストワンに輝いたんですよ。
アステカⅡ』はアドベンチャーゲームとしてはきわめてまれなオールマシン語のプログラムである。「新しいシステムで作りたかった」というゲームデザインの宮本さんと、「BASICがキライ」というプログラム橋本さんの意向でそういう形式に決まったという。主な制作スタッフは、この2人にグラフィックデザインの山根さん、大浦さんを合わせた4人である。さて、『アステカⅡ』の苦労話をうかがおう。
『アステカⅡ』の構想はいつ頃から?
宮本本格的に動き出したのは今年の1月くらいからですね。
ーーその後の進行は?
宮本各シーンのローディングをはじめましたね。全体のブロック図を書いて、それをもとにデータシートにシーンごとに物が置かれている、いないというようなことを書き込んで、原画をおこしていったんです。それと同時に、ぼくは<プロット>を使ってパソコンにデータを移すほうをやって、さらに各メッセージを書くという具合いに、5、6段階のステップで作っていきましたね。実際にプログラムに入ったのは4月上旬からかな。
ーーシンドそうですね。
宮本シンドイですよ。アドベンチャーというのは、作ってもあまり売れないゲームだけど、手間はいちばんかかるゲームですよ。
それでもアドベンチャーにこだわるのは?
宮本正直いってキライなんですよ(笑)。遊ぶのはキライ。作るのは好きだけどね。もともとこのシリーズはぼくの個人的な興味から出てきたものだから、これを育てて行こうとは思ってます。案外この先の『アステカ』はRPGになるかも。ブラック・マジシャンといわれるぼくだから、どうなるかわかりませんよ(笑)。
ところで、<プロット>というのは?
宮本ぼくらはそう呼んでいるんだけど、アドベンチャーゲーム作成用の簡易言語みたいなものです。今年の3月に入社した橋本というプログラマが1週間で作ったものなんです。実際彼がいなかったら『アステカⅡ』は出なかったと思いますよ。
苦労した点は?
宮本操作性に関する問題。アイコン選択方式だね。プログラムが苦労したところだけど。
ーーやはりアイコン選択方式は魅力ですか?
宮本アドベンチャーで困るのは、やるべきことはわかっているのにコンピュータが言葉を受けつけなくて先に進めないという部分。ぼくはあれが大キライで、まずそれを直そうと思ったね。
プログラマとの意見の衝突などは?
宮本よく争いましたよ。プログラムが悪い、データが悪いってね。でもたいていの場合はぼくのほうが悪かったんですね(笑)。
自慢の点は?
宮本注目してほしいところはやっぱりアイコン選択ですね。
今後の課題は?
宮本ある意味では全部ですね。アイコン選択にはひとつだけ欠点があってね。何も考えずにランダムにアイコンを試していけば解けてしまうことなんだよね。もちろんこのゲームにはそれは通用しないけど。まだまだいろいろ問題はありますよ。
ユーザーに対する希望・期待は?
宮本実際の遺跡に材を取っているから、観光的な興味でも楽しめるし、その人がユカタン半島に行ってみたいなと思ってくれたらもう最高だね。
『アステカⅡ』を新方式で作ったもうひとつの理由は、やはり移植の問題を考えてのことだという。売り上げが伸びにくいアドベンチャーのジャンルでは移植の手間を省いて制作コストの節約を図るのは確かに妥当な戦略かもしれない。一方、こうしたマーケティングの観点とはまったく別なねらいで宮本さんは『アステカⅡ』を制作する。2冊の著書を出版してみての実感をまじえ、今後の制作予定、将来の夢を語ってもらおう。
アドベンチャーゲームはこのところ伸び悩んでますよね。その辺はどう考えてます?
宮本知らないストーリーに対するおそれというのがあると思うな。漫画とかのキャラクタに頼っているものが多いのは、親しみを持たせるという意味もあるんだろうけど、あまりいい傾向とは思えないね。
ーーオリジナルストーリーで勝負しろ、と?
宮本そうですね。オリジナルでやっていくことが、アドベンチャーの寿命を長くさせることにつながると思うけどね。一時的に売れても、息長く続ければ、結局ソフト業界全体ではマイナスだからね。
ーーズバリ、『アステカⅡ』の目標本数は?
宮本5万本いけばいいでしょうね。ただ『ザナドゥ』をやっている年齢層とはズレてるからどんなものか?ぼくの個人的な要望は大人に楽しんでもらいたいけどね。大人が遊べば、子供向けをねらわない本当に質の高いゲームが出てくるんじゃないかな。
今後はどんなものを作っていきますか?
宮本『アステカ』シリーズは続けていくけど、やりたいものをやっていきたいね。
最近は『ザナドゥファイル』の著者としても活躍してますが、本のほうはどうです?
宮本おもしろいですね。でもぼくは三文小説なんかのほうが好きですけどね(笑)。
本を出すキッカケになったのは?
宮本ぼくはもともと文字を書くのが好きだったし、会社の方針としてもソフトにかぎらずいろんなことをしていこうという考えがありましたんでね。その第1弾として『ドラゴンスレイヤー』のゲームブックが登場したというだけなんです。
ーーやってみて感想は?
宮本ゲーム本というのはヘタをするとアドベンチャーゲームより難しいんじゃないかな。中身というより、文章をバラさないとなんないし、それを番号で整理しないとならないでしょう?編集もたいへんそうでしたね。
ーー出来上がりを見てどうです?
宮本バグがないでしょ、本は(笑)。
ーー誤植はあってもね。
宮本だから気が楽ですよね。でも、ゲーム本は誤りがあるととんでもないことになるからこわいけれど、まあその点、『ザナドゥファイル』なんかはいいね。
ところで年収のほうはどうなってます?
宮本普通のサラリーマン並だと思いますよ。同年齢のね。
ーーボーナスとかは?
宮本この間は、社員旅行でハワイに行きましたけどね。
ーーそうそう。その話を聞かせてください。
宮本ええ。もう買い放しでしたよ(笑)。ぼくは独身だから(笑)。
ーー‥‥?
宮本‥‥(笑)。‥‥(笑)。
なるほど。では、最後に将来の夢をどうぞ。
宮本第三帝国でも作ってみますか(笑)。まあ、冗談ですけどね。夢っていうのは眠るときに見るもので、昼間は見るものではないと思いますよ。ただね、もっとよいソフトが作れたらいいですよ。
ーー書籍のほうは?
宮本ミリオンセラーでも書けばいいですね。