Kiya Yoshio talks arcade gaming and programming the original Dragon Slayer ports
『ドラゴンスレイヤー』の作者に会う。その名も木屋善夫。あの不思議RPGワールドを作り出したヒトはいったいいかなる人なのか、という興味もシンシンに、立川の街への中央線に乗って出かけたのである。
変わった名字だ。木屋善夫、24歳、双子座、A型。有名キャラクタ総登場、恐怖の闇鍋ごった煮、倉庫番と言うかペンゴ的ゴーストバスターズ絶滅こんにゃろどうだ、おっ、やったぜ快感タイプ、リアルタイム・ロールプレイングゲームという前代未聞の『ドラゴンスレイヤー』の作者として、知らない人以外には、つとに超有名、木屋善夫。
東京都区内全部合わせても電話帳に20数軒という木屋の姓、あのシミュレーションゲームの木屋通商となにか関係があるのだろうか。
全然ありません。でもね、木屋通商のブランド名って知ってますか?なんとフィルコムっていうんですよね。今勤めているここがファルコムでしょ。全くの偶然ですけど、思わず感動しましたね。
ふーむ、生まれたときから名前でゲームデザイナーになるべく運命づけられるなんてこともあるのか、なんて思ってしまう。たとえば、スティーブ・ジャクソンなんて、いかにもゲームデザイナーしてるよね(アメリカのスティーブは、ボードゲーム界の重鎮。イギリスのスティーブはゲーム・ブックのベストセラー作家)。
ま、もし近所に森田明日樹なんて名前の子がいたら、未来の職業は決まったようなものだと思いませんか。思いますよね。
コンピュータとの出会いなんかも聞いてみよう。
パソコンよりも100円ゲームのほうがずっと先。中学生のころ、近くのボーリング場に『スペースインベーダー』が入ったんです。ブームになる前ですけど。必死こいてやりましたね。なにせ小遣いが2000円くらいなんてころですから、100円でいかに長くやるかが大問題でした。お金がないときはうまいプレーヤーの攻略法を見てた。20万点くらいは軽かったな。ゲーム・オーバーになるのも別にドジっちゃうわけじゃなくて、エンエンとやるから、目がショボショボするとか、腹が減るとか、トイレに行きたくなっちゃうとか、そのへんで終わっちゃうわけなんです。もう最後には完全にパターンをおぼえてしまっていたから、ピューんという他人がやってる音を聞いただけで、たとえば、ん、13860点目だな、とかわかりましたね。高校出たら部屋にインベーダー・ゲームを2タイプと『ブロックくずし』を1台、計3台入れちゃったくらいなんですね。今でもひまさえあればゲームセンターに行ってます。最近のでは、『スターフォース』なんか好きですね。家にもコンピュータいろいろあるけど、任天堂のファミリー・コンピュータばっか子供と一緒になってやってます。
あの、その〜、パソコンのほうは‥。
あっ、そうか。パソコンはデパートでPC-6001を見たのが最初です。どこかのガキ、じゃなくて、小学生がガンダムやって遊んでるのを見て、ほーっ、100円入れなくても遊べるのか、てなもんです。
で、即、買ってしまった?
いえ、ずっとナイコン。で、3年前に嫁さんが子供を産むんで入院したときがあって、そんときですよ、買ったのは。ひまだから、なんでもいいから安いパソコンくださいって、PC-6001を家に入れちゃいました。
で、ゲームで遊んでた?
いえ、それからはもう、BASICで自分でゲームくむのにこりまくりましたね‥‥。作ったゲームってのは、戦闘機がビーッと飛ぶのを打つなんてやつ。嫁さんにはバカにされてましたけどね。で、だんだんPC-8801、アップルとエスカレートしてった。
市販された作品は?
最初は『ぱのらま島』。次はこれ、『ドラゴンスレイヤー』の88用。去年の9月に出しました。オール・マシン語で作った初めての作品です。
最近、FM用、X1用と対応機種も増えてきたこととロールプレイング人気で『ドラゴンスレイヤー』の人気が再燃してる。移植のスタッフは?
全部自分です。
何!FMはCPUがちがうのにたいへんじゃなかったんだろうか、心配。
勉強がてら1ヵ月半と予定を立てて結局きっちりできました。同じことを2度やりたくなかったので、移植というより、全部組み直しました。次にX1用を作ったんです。移植版はおすすめですよ、抜群。最初の88用しか知らない人もいるかと思うけど、動きが速いし、モンスターのアルゴリズムなんかも良くなってる。音だって、闘うと剣がビュッと鳴るし、当たるとドッチン、死ぬときワオッてな具合に楽しくなってます。
それじゃ88のユーザーはかわいそう?
まかせなさい。回り回ってX1用を88SR用に、移植が完了したところなんですよ。88用の旧バージョンのディスケットに交換手数料1,000円(送料込み)を添えて、ここ日本ファルコムに送ってもらえれば、新しいのと交換します。
んー。PC-88→FM-7→X1で、またまたPC-88というわけか。芸が細かい。
この芸の細かさ、そして発想のユニークさetc.はどのあたりからなんだろうね。
去年の1月から作り始めたんですけど、最初はおよそ違ったゲームだった。マイクロマウス・ゲームみたいなのを考えていたんです。
ああ、あれだ。あらかじめロボットに、どう迷路を抜けるか、たとえば左手壁にさわりっぱなしの法則とか、アルゴリズムを教え込んでおいて、出題された迷路を抜けるタイムを競うゲーム。それをディスプレイでやっちゃおうということね、きっと。
そう。でも、まったく違うものになっちゃったのは、御存知のとおり。残っているのは画面が8方面スクロールするってことくらいかな。ファルコムに持ってくるとみんなワイワイいうんですよ、無茶苦茶なことを。もともとは家は移動できるようにはなっていなかった。
それじゃプレイヤー苦労する。体力を回復させたり、攻撃力をアップするには、いちいち遠くの家に帰らなければならないように、このゲームのプロトタイプはデザインされていたんだね。
誰かが、めんどうだから家を運べるようにしたらっていったんですよね。もうファルコムのスタッフはそんな突拍子もないこというのばっか。で、こうなった。
木屋さんは酔いどれプログラマーという噂もありますけど‥‥。
そのとおりです。酒を飲むのとゲームをプレイするのと、プログラムするのが趣味。いたって無趣味な人間でしょ。あと、バイクくらいだから、のめり込んでいるのは。
いえいえ、十分に多趣味です。ただし没頭が並じゃないから、結果的にプロになっちゃって、趣味とはちょっと呼びにくくなってるだけだと思います。しっかり、人間がマルチです、はい(ちなみに車検の資格もしっかり持っている)。
酒を飲みながら、おツマミがわりにプログラムすると、はかどりますね。調子いい。今、あらためてプログラムをよく見直すと、もうちょっと考えればというところはありますけどね、ハハ。いちばん困るのは次の日、しらふで自分のプログラムを見ると何が何だかさっぱりわかんなかったりすることですよ。
なんとありがたいお話だ。ではログイン読者のゲームデザイナー希望者になにかアドバイスをしてもらおう。
必死こいてやる!これだけです。やる気さえあるなら誰でもできる。
と、木屋さんは、バグ除けにディスプレイに林真理子の写真を貼った愛機に向かい、静かにコーディングを始めるのであった。(取材文/宮森栄一)