Kiya Yoshio discusses his personal history and the origins of Dragon Slayer

魔法を使って竜退治をする、とくればご存じ『ドラゴンスレイヤー』。折からのロールプレイングゲーム・ブームにも乗って、昨年夏の発売後、順調にヒットを続けている異色RPGである。本誌の読者人気投票で総合で24位、RPG部門では第3位となったこのゲームの作者が今回登場の木屋さん。自動車整備士から転身したという異色のサラリーマン・プログラマーだ。リアルタイムとロールプレイングをドッキングさせた同ゲームの製作裏話をまじえ、木屋さんのゲーム作家への道程を聞いてみよう。構成⚪︎吉田斉/撮影⚪︎萩原傭

 1年ほど前からパソコンゲーム界で静かなブームを呼び、いまやアドベンチャーゲームを追いこそうという勢いで人気を集めているのがロールプレイングゲーム(RPG)。木屋善夫さんは、そのRPGの新しい方向性を打ち出したソフトとして人気沸騰中の『ドラゴンスレイヤー』(日本ファルコム)の作者だ。今月は、弱冠24歳で、RPGをついにリアルタイムにしてしまった彼に、その製作の秘密などをじっくり聞いてみた。

日本ファルコムに入社したいきさつは?

木屋客だったんですよ、ショップのね。ここにいるメンバーはみんな元客でね(笑)

ーーどんなふうに誘われるの?

木屋ぼくは、ソフトを片っ端から買うんですけど、ここにいりびたってたら、ちょうどカシオのFP1100が安く出てびっくりしてね。いじくっていたら、社長が『これでゲーム作ってみないか?』っていうんで、『じゃ、やってみようか』と。実際に入社したのは半年くらい前だけど、それがこの世界に入るキッカケですね。

ーーそれまでは?

木屋整備士の専門学校を出て、自動車の整備士をやってたんですよ。

ーーじゃあ、メカが好きなんだ。

木屋いや、コンピュータは特殊ですね。自動車いじくってるヤツは皆コンピュータ嫌いだな。ぼくは高校時代からバイク乗ってて、自動車に興味持ったんだけど、一応検査士の資格を持ってるんですよ。

ーー珍しいですね。それがなんでプログラマーの道を?

木屋ぼくはおもしろいことなら何でもいいですからね。それに整備士の社会は、資格を持っていても年功序列でね。それがイヤだったんで、実力がそのまま通用するところのほうがいいと‥‥‥

プログラムはどんなところがおもしろいんですか?

木屋コンピュータに向かってるとね、いつも頭の中がクルクルと回転してて、すっきりしてるんですよ。バイクに乗ってても、家に帰っても、頭がシャキッとしてる。ところがしばらくコンピュータから離れてデスクワークしてると、油がきれたみたいにボーッとなってしまうんです。

ーー刺激がある?

木屋そうですね。それと、プログラムというのは創り出すことでしょ?何もないところから創り出すから、これはおもしろいと思う。

パソコンとの出会いは?

木屋べつにどうってことないですけど、ちょうど3年前、うちがガキが生まれるんで、女房が1ヶ月くらい入院したんですよ。で、家で1人でいても暇でしょ?することもねえし、何しようかなって。それで電気屋に行って、PC-6001を買ってきたんですよ。

ーー結婚は早かったんですね。

木屋20歳のときにしました。整備士の学校が愛知県にあったんですけど、卒業して東京に帰ってきたら、何もかも膳立てがととのってて、すぐ結婚です。楽でしたけどね(笑)

ーーPC-6001の後は?

木屋PC-8801を買って、それからファミコン(ファミリーコンピュータ)ですね。テレビで宣伝しているのを見て、これはスゴイ、買うっきゃない、って思いましたよ。それで遊んでみて、やはり『スゴイ!』と。ところが、ここへ来ていくらそういっても、誰も信用してくれないんですよね。しょせんオモチャだろ、てね。でも、そのうち皆、その良さをわかってくれましたけど。


 木屋さんの勤める日本ファルコム社は、東京都下の立川市にある。取材当日は雨が激しかったので、木屋さんいつもと違って自動車で通勤。「バイクにまたがってる写真を撮ってもらいたかったんですけどねえ」としきりに残念がっていた。無類のバイク好きなのだ。とにかくプログラムにのめり込むタチらしく、ストレスの解消法にも朝晩のバイク通勤を第一にあげる。そんな彼のゲーム狂度をチェックしてみよう。

パソコンを手に入れるまでは、ゲームに縁がなかった?

木屋ぼく、ゲームセンターでバイトしてたんですよ。その頃バイト代もらうと、皆100円玉に両替してね。何のために働いてるんだか‥‥(笑)

ーーのめり込んだゲームは?

木屋スペース・インベーダーですね。20万点くらいは軽くいきましたよ。指にインベーダータコができたくらいでね。

ーーじゃ、アーケード歴は古いんだ。

木屋中学生の頃からテレビゲームに熱中してましてね。そのゲーム好きが高じて、バイトまでしちゃったんだな。それで、ついにゲームのテーブルごと買い込んじゃってね。5000円っていう安い値段で手に入ったんで‥‥。でも全然おもしろくなかった。

ーーどうして?

木屋金入れないとちっともおもしろくないんだ。途中でやられちゃっても、すぐもう一回やり直しってなっちゃう。ソフトをコピーしてやる場合だって同じでしょ?高い金だして遊ぶから必死になるわけでね。

最近楽しかったゲームは?

木屋国産なら『夢幻の心臓』かな?一時期社内で“ドクッ、ドクッ”ってのがはやってました(笑)。でも、どのゲームもレベルは同じじゃないかな。『これは!』、というのは記憶にないな。ゲームというのははやっているときはおもしろいけど、終わると忘れてしまうのですからね。

どんなタイプのゲームが好き?

木屋リアルタイムがベタだから、ロールプレイングですね。最近のリアルタイムは難しいですよ。妙なテクニックがいるし、操作性も悪いしね。200面ある、スゴイ、といって買ってきても、ベタだから3面くらいしかできない。あとの197面は損するわけで、何のために金払ったのかわからないですよ。『ドラゴンスレイヤー』ではその辺考えてましたね。

これまでにつくったゲームは?

木屋カシオのFP用の『ギャラクティックウォーズ』と悪名高い『ぱのらま島』です。両方ともBASICで作ったんですけど、とくに『ぱのらま島』はさんざん叩かれましてね、『遅い!』と。遅いのはBASICのせいでオレのせいじゃない、と思ってましたが(笑)、BASICしか使えなかったのが問題だったんでしょう。おまけにあのプログラムはデカかったんで、分割してしまったんですよ。あと、某誌で『デタラメな乱数を使っているのが気に入らない』って書かれたけど、デタラメでない乱数はどういうんだ、と思わず叫んじゃいましたね(笑)

ーーやはりゲーム評は気になる?

木屋なりますよ。よく覚えてます。で、もうBASICはやめた、って決めたし、もう乱数も使わない、と。それでつくったら、どんな文句が来るかと思うと『マニュアルがダサイ』だって(笑)


 木屋さんは最近、RPGの元祖といわれる『ダンジョンドラゴン』を研究中だ。苦手な英語も、ことRPGの話となれば別、「辞書を引きながら、読むのは楽しいですよ」という。そこで『D&D』についてたずねると、「これって、パラメータやゲームの要素があるだけで、ゲームの実態は何もない。だからRPGは何やってもいい、おもしろけりゃいいんですよ」と答える。さて、『ドラゴンスレイヤー』の核心に追ってみよう。

『ドラゴンスレイヤー』について作者としての感想は?

木屋テクニックの面では非常に幼稚だけど、内容に不満はないですね。

ーーゲームづくりは自分一人で?

木屋いえ。プログラム自体は一人でやったほうがいいと思うけど、キャラクタをつくったり、グラフィック、構成なんかはみんなでやったほうがいいしね。それにキャラクタつくるの、ぼくは得意じゃないから。

ーー構成をみんなで、というと?

木屋クレームとか注文が出るんですよ。ウチの社員はメチャクチャなこと要求するんで大変なんだけど、結果としてはよかったですよ。遅いとか画面がチラつくとかいう批判はカンベンしてもらって‥‥。とにかくゲームがおもしろけりゃ、いいじゃないですか(笑)

ゲームのアイデアを思いついたのは?

木屋去年の始めにアップルの『コップツ&ロバーツ』というゲームを見て、とてもおもしろいんで、そっくりそのまま同じものを一晩でつくったんです。それを土台にみんなで肉づけしたんです。完成まで7ヶ月くらいかかりましたね。その頃は社員でなかったんで、勤めをしながらやりました。

ーー見てるゲームはいろいろ参考に?

木屋あらゆるものを吸い込んじゃいますよ。おもしろいと思ったものは全部。ゴッタ煮ソフトでいいんですよ。でも『ドラゴンスレイヤー』は今までになかった種類のゲームだと思いますよ。

ゲーム評についてはどう?

木屋あるところでね、『これは隠しコマンドを知ってしまうとおもしろくない』ってだけ書いてあってね、「テメエ!』って思いましてね。これだけは頭にきた。ウチがもともと教えたんですからね。他の批判は、だいたいこっちが反省してる部分をついてきてるから、ナルホドと思うけど‥‥

ーー隠しコマンドというのは?

木屋1面で引っかかっても立ち止まらずにすむ、というんでつくったんです。でも、一般には公開してません。だって『ロードランナー』は何面でも先が見れちゃうけど、遊ぶほうが次の面がどんなものか知りたいから、必死コイテやるわけでしょう。先に進めるとわかったら、おもしろくないですよ。それでも、遊ぶ人もいろいろだからどうしてもという人には教えてます。

今後のゲームプランは?

木屋今年の夏までに『ドラゴンスレイヤーⅡ』を出します。『Ⅰ』ではダンジョンの中だけでしたけど、今度は土地の世界もつくります。大陸の中に街やタワーがあって、その中に入っていくようにします。魔法もたくさんつくってね。

ーー今、どんなところをやってるの?

木屋ゲームの仕様です。内容は豊富にしたいけど、何でもやれるというわけにはいかないですからね。現実的にディスク・ユーザーよりテープ・ユーザーの方が多いから、テープにおさまることを優先するでしょう?きびしいですね。

『ドラゴンスレイヤー』シリーズのPRをどうぞ。

木屋ぜひディスクを買ってください、ということです。ウチはディスク版とテープ版で内容ははっきり差をつけてますから。機種によっても違うんですけど、内容が多く入るかどうかでおもしろさも違いますからね。


 わずか3年足らずで、整備士からゲームプログラマーに見事な転身を果たした木屋さんだが、ゲームをつくって得る収入はどれほどなのか、大いに気になるところだ。
 そこで、「ぼくは1日9時間は睡眠をとるんです」と余裕で笑う彼に、その仕事ぶりと報酬、ついでに”パパさんプログラマー”としての家庭での生活などを、まるごと聞いてみよう。

ゲームをつくって得る収入は?

木屋まあ‥‥(笑)、いろいろありますよね。ファルコムに入社するまでは、ハードでもらってました。『ぱのらま島』のときは特大ディスプレイを1台です。

ーー『ドラゴンスレイヤー』は?

木屋ぼくはこのゲームを持って入社したわけで、6月に入って7月にボーナスをもらった、っていうことでしょうね。でも報酬をアテにしてソフトつくってたら、先はあまりよくないですよ。それにこの人たちはお金のことをいわないから。

ーー好きでつくってる?

木屋というか、ソフト業界というのは不安定でしょ。先のことわかんないですよね。今もうかってガバッと金もらっても、来年つぶれちゃったら元も子もない。それで今は、人並に月給をもらってるんです。余った分はプールしておいてもらってね。そうすれば、食うためにゴミみたいなソフトつくる必要もないし、安心して仕事できるもんね。

ーー職業として安定するのは大事、と。

木屋その辺のプログラムコンテストに出すようなアマチュアじゃないんだから。ぼくはこれでメシ食ってるし、商売だしね、ずっと続けていかなくちゃなんないから。

勤務はどんなふうに?

木屋朝9時半に出社して7時半までここにいます。たまに夜遅くなるときもあるけど、徹夜はしたことないな。ここは誰も一度も徹夜したことはなくて、社の自慢になってるんです。

ーー勤務時間中は、プログラムを組んだり、ゲームの仕様なんかを?

木屋べつにそういうわけじゃないんです。社長は何もいわないから、好きなことやれるし、ぼくたちはハードも売りますからね。

整備士からプログラマーへの転身で、奥さんの反応は?

木屋ウチは無関心ですね。パソコンに向かってるほうがうるさくなくていい、と思ってるみたいです。干渉なしで、やりたいことやらせてもらってます。

ーーお子さんは?

木屋うるさいですよぉ(笑)。もうすぐ3歳になるんですが、こっちがコンピュータの前にすわると、『ゲームやろう、ゲームやろう』ってね。朝、会社へ出かけるときも『パパどこ行くの?ゲームしに行くの?』って、これですからね。誰がそういうことを吹き込んだ、って‥‥(笑)

ゲームプログラマーとしての今後は?

木屋今、この業界って移り変わりが激しいですよね。さっきまでスター・プログラマーと呼ばれてた人が、あっという間にいなくなっちゃう。機械がどんどん変わっているから、新しい知識を仕入れていかなくちゃなんないんです。だから常に好奇心を持って、乗り遅れないようにってことですね。

最後に夢を?

木屋先まで見えないんです。先まで見ちゃうと力が抜ける。でも、絵がきれいでアニメみたいな3次元ロールプレイングができれば、って思いますよ。ビジュアルでリアルなね。でも、今のところが『ドラゴンスレイヤーⅡ』の完成がとりあえずの目標です。