Hashimoto Masaya and adventure game creators discuss narrative design and the future of adventure games
今林宏行
所属:シンキングラビット
代表作品:『カサブランカに愛を』
代表取締役。既婚。アメリカの人気作家、ジャック・フィニィとニール・サイモンをこよなく愛す。作品にもその傾向は表れ、”カサブランカ‥”ではラブロマンスをテーマに。現在”鍵穴殺人事件”パート2の企画を考案中。
鈴木理香
所属:リバーヒルソフト
代表作品:『殺人倶楽部』
企画・脚本。未婚。大卒後、(株)サンリオを経て、3年前にリバーヒルソフト設立に加わる。”殺人倶楽部”は自社ブランド第3弾。”J.B.ハロルドの事件簿#2 ニューヨーク・レクイエム”は見逃せない1作になりそう。
橋本昌哉
所属:日本ファルコム
代表作品:『アステカⅡ・太陽の神殿』
ソフトウェア開発課。既婚。今年3月、日本ファルコム入社。社内のメンバーとヘヴィ・メタのバンド活動もこなす。”アステカⅡ”を無事に送り出してしまった現在、愛娘HITOMIちゃん(1.5歳)と楽しい毎日が続く。
雪ノ浦美樹
所属:スクウェア
代表作品:『アルファ』
企画部リーダー。新婚。スクウェア設立時より、グラフィックデザイナーとして在籍。”アルファ”ではデザインを離れてシナリオを担当し、現在は、ファミコン版”アップルタウン物語”を企画製作中という多忙なる新人類。
RPGに押されっぱなしだったアドベンチャーゲーム、今ようやく回復の兆を見せ始めた。RPG絶対優勢だったヒットチャートのバランスも序々に崩れ、アドベンチャーが上位に肉迫することもしばしば。じゃ、ここでひとつ、ソフトハウス間の親睦を深め切磋琢磨してもらうため、ログインがひと肌もふた肌も脱ごうじゃないの。
愛読者の皆様、昨年4月号、RPG超特集の目玉企画だった「浜名湖うなぎ座談会」を、覚えておいででございましょうか。あれは、日本を代表する3人のRPG作家に集まっていただき、うなぎ料理に舌鼓を打ちながら、なおかつお互いの親睦まで深めてしまおうという虫のいい企画でありました。
今回のアドベンチャー座談会も、企画の主旨は前回と同じ。活躍中のゲーム作家の皆さんに、腹を割って話し合ってもらおうというわけでありますね。酒が入れば、それはもう面白い話がポンポンのポン。ひと晩中、飲んで歌って踊って食って、騒ぎまくっ‥‥いや、語り尽くせば、アドベンチャーゲーム新時代の黎明、自ずと見えてくる!
が、座談会が成功するもしないも場所次第。淫靡に賑やかすぎると、座談会とは名ばかりの慰安旅行になってしまいそうだし、逆に寂しすぎると出席者のノリが悪くなる。これは責任重大。担当のYは、3日間ウウ〜ンと考えきばった結果、4日めの朝、遂に大英断を下したのだった(ホントかよ:編集チョ)。「どーせ食うなら、うまいモンがよろし。今回は天下の台所、大阪でおますな。名付けて、『アドベンチャー座談会 in OSAKA』。やったるでー」
そして、某月某日。時刻はちょうど3時のおやつ。大阪は御堂筋沿いにそそり立つ、ホテル日航大阪2階のティーラウンジで、さる業界の4人の人々がテーブルを囲み、紅茶をいただきながらニコヤカに談話中の様子。なかに、話の内容には気もそぞろ、窓の外に心を奪われている男がひとりいた。今夜の宴会の幹事、違った、座談会の進行役Yだ。一緒に付いて来たTはTで、ティーカップに残った琥珀色の紅茶に映る自分の顔をニタニタながめているし‥‥(オイオイ、しっかりしてくれよな。この座談会を、6ページの記事にしなくちゃいけないんだぜ:編集チョ)。
肝心の2人がこんな具合だから、その場の雰囲気がシラけそうになって、アッまずい。と、ちょうどそこにタイミングよく、残る2人の作家が相次いで現れた。フーッ。
さて、今回集まってもらった4人の作家とは、東京から日本ファルコムの橋本昌哉と、スクウェアの雪ノ浦美樹、比較的地元の兵庫からシンキングラビットの今林宏行、それに福岡からリバーヒルソフトの鈴木理香の面々。言わずと知れた、現在大人気のアドベンチャーゲーム”アステカⅡ・太陽の神殿”、”アルファ”、”カサブランカに愛を”、そして”殺人倶楽部”を作ったご本人たちだ(敬称略ね)。なんて豪華な顔ぶれなんだ。4人とも忙しい人たちなのに、Yの「お願いしますよ」のひと言で、快く集まってくれたのだ。これもYの人徳、あるいはログインの誌徳?それとも、4人とも宴会好きなのかしらん。
全員そろったところで、やぱり私たち日本人ね。律儀に名刺交換などして、社交辞令を述べあって、1時間もしないうちに、みんなすっかり打ちとけてきた。
今宵の座談会は、ご存知「かに道楽」に始まって、大阪名物たこ焼き屋、夜の道頓堀散歩道と、3ヵ所にわたって繰り広げられる予定。スクウェア営業部の梶谷真一郎氏も特別参加して、話しだおれの食いだおれ座談会。それではひとつ、にぎやかにいきまひょかぁ。
え〜、お鍋のカニは逃げませんから、箸を休めながらまずは、みなさん、それぞれの作品を手がけたいきさつや、これまでに感銘を受けたゲームなどについてうかがいしましょう。
鈴木そうですね、リバーヒルソフト創成期の頃、つまり私たち自身が実際に作って面白いと思えるようなゲームをいろいろと模索していた頃なんですけど、ちょうどシンキングさんの”鍵穴殺人事件”を知りまして‥‥。人物やストーリーを重視した物でも十分イケルんだなというのがわかりました。それ以来ウチは、シナリオとスターリング(配役)に重点を置いた推理ものをやってきています。で、今回の”殺人倶楽部”に至ったわけですね。やっぱり”鍵穴”は、みなさんにもずいぶん影響を与えていると思いますよ。
雪ノ浦ええ、私も”鍵穴”にはカンメイを受けました。”デス・トラップ”の制作前に、アドベンチャーゲームとは何ぞやということで、”トランシルバニア”(ペンギンソフトウェア)なんかもやってみたんですけど、英語がわかんなくて投げちゃいました。その次にやったんです、”鍵穴”。よかったですねぇ、まるで映画をみているみたいで。
今林恥ずかしいなぁ。でも今考えると、”鍵穴”も気に入らんところがいくつかあってね‥‥。もともと僕は、筆が立てば、文筆業で食べていきたいなって思っていたし、映画も好きだったんで、それじゃ、小説や映画に匹敵するようなもの(話)を作ってやろって気になったんですよ。”道化師殺人事件”にしても、”カサブランカに愛を”にしてもね。
ーー橋本さんはいかがですか?
橋本僕は、スタークラフトが移植していた一連のアドベンチャーゲームが好きでしたね。
今林”ウィザード&プリンセス”とか面白かったねぇ。僕はApple版だったんだけど、もう毎日毎日やってたわ。
ーー毎日やってたといえば、うちの小島ですよ。一時期、”殺人倶楽部”をそれこそ、朝から晩までピコピコ‥‥。編集長って仕事していないんです(笑)。
鈴木あ、お餅がほら、こんなに溶けちゃって。早く食べちゃわないと(笑)。
雪ノ浦昔の『物体X』みたい(笑)。
橋本ところで鈴木さん、”殺人倶楽部”はFM-7版出ているんですか?実は僕、7のユーザーなもんで。
鈴木ええ、出ています。ウチは、基本的に現行機種にはすべて対応させる方針ですから。今回はまず98で作ってから、8ビットの機種に落としていきました。2DDディスク2枚のデータを、シナリオ、セリフともまったく変えずに2D2枚に移植するのは大変でした。
一同2D2枚に‥‥。ほう(感嘆)。
今林僕んとこは、いつも98で作ってから、下の8ビットに落としていくやり方やね。当然、その機種ごとの特性も生かしたいから、グラフィックやスピード等、よりよくなるところはもちろんそうしているし。
ーーファルコムさんは、担当者がひとりで移植までやってしまうとか‥‥。
一同ほほう(驚嘆)。
橋本そうです。最初に88で、その機能をフルに使ったものを作っておいて、あとは体力の続く限り移植しまくるんです(笑)。シンキングさんのように、移植機種の特徴を考えながらやっていくんですけど、そのソフトを開発して中味を知り尽くした本人が作業するわけですから、けっこうやりやすいですね。ただ、音楽については、サウンドデザイナーに作曲してもらうという形を取ってます。”アステカⅡ”のイメージ6曲依頼して、できあがったものの中から、場面に合った曲を選んでいくという具合です。
雪ノ浦ウチは88を中心に考えていて、移植も88のレベルに合わせるようにしていますね。98のユーザーには漢字が出ないのを申し訳ないと思っているんですが‥‥。でも、音楽にはかなり力を入れているんですよ。社内のサウンドデザイナーにゲームのストーリーを詳しく説明して、絵を見せ、その場面に合った曲を作ってもらうという、映画製作と同じやり方なんです。
鈴木(うなずきながら)これからのアドベンチャーゲームには、音楽が不可欠なものになりますね。これは、次回作への課題だわ。
今林そやね。アドベンチャーゲームが生き残っていくには、総合芸術の道を取らなあかんと思う。人の心を揺さぶるようなシナリオと映像、それに音楽の三位一体でないとね。僕んとこの場合、今まで音楽あまり入れてなかったんだけど、今度出すアドベンチャーの”マデリーン”とその後に控えているハードボイルド、そこから本格的に音楽をやっていくつもりなんです。
ーー新作の話、聞いてないなぁ。
今林いってないもん(笑)。
ーーそれじゃ、話がひと段落ついたところで、場所を変えましょうか。せっかく大阪まで来たんですから、次は名物のたこ焼きっていうのは?
梶谷‥‥そうしましょう。
ここのたこ焼き屋さん、島田紳助が前にテレビで紹介してたんですよ。
鈴木・雪ノ浦おいしいっ。
ーー東京のたこ焼きと違って、本当にたこばっかりですね。美味(モグモグ)。突然ですが橋本さん、”アステカⅡ”って一見ロールプレイング風でしょ。でもやってるとけっこう正統的なアドベンチャーという感じがして、その辺うまいなぁと思ったんですけど‥‥。
橋本そうですね。アドベンチャーをやる人はロールプレイングに抵抗があるし、逆にロールプレイングをやる人はアドベンチャーに抵抗があったりするでしょ。でもふたつのジャンルをクロスオーバーさせれば、両方のファンから楽しんでもらえますから。
鈴木その辺を狙ってらしたんですか。
橋本ええ。基本はオーソドックスなアドベンチャーなんですけど。それと、トリック、つまりパズル的な要素ですね。ゲームの感動はエンディングだけじゃなくて、途中でひとつひとつ謎を解いていくところにもあると思うんですよ。ストーリーが展開していく上での小さな感動が多ければ多いほど、ラストシーンを見たときに、「素晴らしい」のひとことに尽きるわけです(笑)。
鈴木トリックにしても、ひっかかったときに、自分のミスで間違えたと思わせるような、論理性のあるものじゃないといけませんよね。
雪ノ浦「ハメられちゃったぁ」って快感が込み上げてくるような。
今林苦笑いしか出ないというヤツやね。けど、マニアは別として普通の人は、たとえば推理小説を読むと、頭の中でこの人も犯人かもわからん、この人も犯人かもわからん‥‥て、同時にいっぱいの線を追っているんですよね。で、誰かが犯人やったら、なるほど自分の思ったとおりや(笑)、といった部分があるんですよ。だから、ウラをかくということは大事なんだけども、微妙に予測させるという要素もないと、ボクはダメだと思うんだ。小出しにされてきたヒントが、解き手の意識していないところで熟成されて、それが次の謎を解いたときに「やっぱりそうやないか」っていわせる。「やっぱり」って呟いた本人は、思わず作品の世界に引き込まれていくようになるんじゃないかな。
鈴木そのとおりですね。それに”殺人倶楽部”の場合は長編の推理小説を書いたつもりだったんで、ストーリーを感じてもらうために、みなさんが必ず解けるソフト作りを心掛けたんです。謎解きに労力を集中できるように、コマンド選択方式も採用しました。ただ、是非とも解いてもらいたくて、コマンド選択にしたといっても、コマンドの種類は、入力方式で使用すると思われる以上の数を用意しましたし、シナリオも練りに練ったものですから、「そう簡単にはラストシーンをお見せしませんよ」ってことですね。
橋本ウチでは今回、アイコンを使いました!たとえソフトのボキャブラリー豊富で、受け付ける名詞や動詞が多いにしても、解き手のやりたいことはひとつなんですよ。例を上げると、これです(たこ焼きを指差す)。「タコヤキ ミル」と入力、もしくは選択するよりは、動詞をアイコン(絵)で選んでから、画面に見えている物をカーソルで指した方が、実際に起こすアクションに近いんじゃないかと思いまして。ジョイスティックにも対応していて、操作も楽ですよ。ユーザーの希望に応えて成功した例だと自負しています。
今林一時はことば探しというのが否定されていて、みんなコマンド選択に走りかけたけど、僕はコマンド選択は嫌いやね。本来、データを多くして、どんなことばでも受け付けるようにすればいいわけなんです。コマンド選択は、メモリとその辺との兼ね合いから生まれた、ひとつの打開策に過ぎないでしょ。決してユーザーのことばだけを考えての方法じゃない。もし、僕がユーザーのために何か手段を取るとしたら、ファンクション・キーに基本的な動詞を入れちゃうとか、すべての動詞、名詞を表にしてマニュアルに載せちゃうといった方向ですね。
雪ノ浦ウチもコマンド入力式でやってまして、”デス・トラップ”を作った後に、大きな課題が残りました。今林さんもおっしゃったように、思いつくことばを全部受け付けるようにするには、データを食い過ぎてしまうんです。そこでどうしようかとさんざん考えた末、次からは英語を切ろうってことになりました。文字を打ち込むのも、かなと、ローマ字かな変換の両方に対応してましたから、英語切っちゃっても大丈夫だろうって‥‥。
今林なるほど。‥‥今のところは、ゲームのシナリオに合った方法を取るのがベストみたいやね。
鈴木(そう)ですね。ただし、その問題を解き手に悟られないようにするのが大切で、私たちのウデの見せどころというわけですね。ホントに。
ーーフムフム。おなかも満たされたことですし、そろそろ出ましょうか。夜の道頓堀を散歩しながらまたお話を。
梶谷そうしましょう。ごちそうさま。
お将おおきに。また来てや。
では最後にみなさんおひとりずつ、これからの抱負や夢などを。
今林今のゲームが長時間かかって淘汰されれば、ゲームとビジネスの間に存在するエンターテイメントが見えてくると思うんです。映画や小説をライバルと謳えるような心底楽しめるもの、人生に影響を与えるようなエンターテイメントを送り出していきたい。そのためには時代を半歩リードしていかなあかんけどね。あと、ことば探しの魅力は忘れたらダメや(笑)。
雪ノ浦ウチは今までアニメーション効果なんかでセンセーションを巻き起こしてきたから、そのノリを持続させるのが当面の使命だと思ってます。限られたデータの中で、どうシナリオやグラフィック、ミュージックを伸ばしていくか、もしくは新しい何かを身につけるか、ということですね。
橋本僕としては、パソコンを使って命令する時に、いかに自然な感じで行えるようにするかということですね。コマンドの選択でも入力でもない、たとえばマイクに向かって命令すると、それについてスピーカーから音声で答えてくるという具合に。その時代の持てる技術を最大限に生かして、ユーザーがゲームに集中できるようにしたい。
鈴木解き手がウチのソフトをプレイしているときは、パソコンを通して作り手である私たちと対話してくれているんだなって気がするんです。アドベンチャーゲームをコミュニケーションゲームとして捕え、機能の追求、データ量の見直し、ストーリーの徹底をはかっていくつもりです。その結果、解き手が私たちの存在に気がついてゲームをプレイしてくれたら嬉しいですね。
今林僕たち、ゲームを作ってる人間たちは、サギ師かもしれんね。騙して喜ばれるヘンなサギ師や‥‥
ーー騙してなんぼやね(一礼)。